「データ活用」は誰もがその重要性を認める現在の経営で不可欠なものですが、データ活用実現に必要な要素は何でしょうか。
現在、想像をはるかに超えるスピードでビジネスや産業の変化が起こる、予測不能な時代に突入しています。目まぐるしく変化を続ける経済環境、急速に発展するテクノロジー、多様化するお客様ニーズ、あらゆる産業においてお客様ニーズが移り変わるスピードは年々早くなっています。
多くの企業ではDX(デジタルトランスフォーメーション)が徐々に進み始め、DX推進によるゴールを達成するために欠かせない手段の1つとして「データ活用」がますます重要になっています。
今回は超高度データ管理を実現するABLERのコンセプト、そしてABLERが取り組む「データ活用」に対するお客様課題について、NTTデータ 瀬戸篤志金融グローバルITサービス事業部長にお話をお伺いしました。
ABLER:2020年5月創設。データ管理の高度化をトータルでサポートするブランド。 データ収集・クレンジング・活用まで一気通貫サービスを提供し、お客様のDXに寄与
https://www.nttdata.com/jp/ja/news/release/2020/052000/
――瀬戸事業部長は以前からABLERビジネスに関係していらっしゃると思いますが、ABLERとの関係について教えてください。
もともとABLERが2020年5月に立ち上がる以前から非構造化データに着目していました。NoSQLデータベースであるMarkLogicを活用したビジネス展開や、加盟店審査ソリューションの企画開発、Bank of England案件など、ABLERの素地作りを担当していました。その後、NTT DATA Germanyに出向し、欧州地域でソリューション展開を行うなど、ABLERの誕生から成長の過程を見てきました。
――非構造化データビジネスの土台作りから、拡大までABLERの原点を支え成長させたのがまさに瀬戸事業部長ということですね。例えば、瀬戸事業部長が企画開発に参画された加盟店審査ソリューション(iCrawler)は現在もABLERを支える1つのソリューションであり、加盟店審査以外の業務にも導入していただいています。
――そんなABLERは現在「有象無象のDataから経営判断やビジネスに資するIntelligenceを提供し、データの経営資源化を実現する」というコンセプトを掲げています。このコンセプトについてどうお考えでしょうか。
とてもよいと思っています。もともとABLER立ち上げ前から「Dataの洪水の中からNoSQLデータベースを活用して単なるDataからInformationに引き上げ、それらをAIなどのテクノロジーを活用して経営判断に資するIntelligenceに引き上げる」ことをコンセプトとして提唱しておりました。データドリブン経営を推進するにあたって、非構造化データの活用は重要な要素であると考えております。売上情報や受発注情報のような構造化データに加え、非構造化データの中には活用されていないが貴重なデータが眠っています。例えば、ビジネスの意思決定に真に必要なデータやヒントになるデータはお客様との対話やメール、折衝メモなどの中に記録されていることが多いでしょう。これらのデータを活用可能な状態とし、複数のデータを組み合わせることが真のDXにつながる、そう考えています。また単に日々発生する新たなデータをデータベースに格納すること自体は価値を生みません。現在主流のテクノロジーではIntelligenceを生む前段階にかなりの準備時間と稼働が必要な状況です。特に新しい種類のデータをデータベースに格納するのには作業が必要となります。データドリブン経営ではいかにAd hocにデータを活用できるか、といった観点も重要です。そういった意味で、ABLERのコンセプトである「有象無象のDataから経営判断やビジネスに資するIntelligenceを提供し、データの経営資源化を実現する」というのは、データドリブン経営を実現するにあたって重要となってくると考えています。
――現在のデータ活用の中心である構造化データだけではなく、真のデータ活用には、非構造化データを含む未活用データをビジネスの意思決定の土俵に引き上げる”経営資源化”が重要であるということですね。
――私も業種業界問わず様々なお客様と接しておりますが、お客様から「メール、メモ、様々な資料やドキュメントなどがたくさん蓄積されているけれども、うまく活用できていない、どう活用してよいか分からない」というお声を多くいただきます。
――ABLERが取り組んでいるようなデータ活用における課題はなんだとお考えでしょうか。
データ活用するにあたりデータ蓄積・分析環境を作ることがありますが、基盤構築を目的としたプロジェクトはうまくいかないでしょう。データ活用の目的が何か、具体的なユースケースが必要です。基盤は不可欠ですが、それは単なるツールの一部、手段であり、重要なのはそこで何を実現するか、です。
そして、作るうえで一番大事なのはTry&Errorで小さく作り段階的に成長させることです。壮大なデータ活用基盤を従来のウォーターフォール開発で数年かけて作り上げていては、世の中のDXの流れについていけません。出来上がったころには世の中のトレンドもデータ活用の目的も変わってしまっており、せっかく作った基盤が使われない、といったことがおきます。
また、柔軟性もとても重要です。とにかく現代は状況の変化がすさまじいスピードで起きています。データ活用においても、必要なデータやそれを生み出す元データも変わります。それらのスピードについていける柔軟な基盤である必要があります。使いたいデータを使いたいときに、使いたい形で取り出すことができることが求められるでしょう。
――まず、データ活用における目的や具体的なユースケースを明確化し、”何を実現するか”が重要になってくる。そして手段である基盤は柔軟性を持たせ、Try&Errorで小さく作り段階的に拡充することが求められるということですね。
――ABLERも、NoSQLやセマンティック技術などを活用し柔軟性に富んだ高度なデータ管理を実現しています。お客様自身もDXに取り組まなければいけないものの課題が明確化できておらず悩まれているケースが多いため、我々も課題の特定からお客様と一体で取り組んできています。そのような中では最初から要件やユースケースを確定させることが難しいため、スモールスタートでサイクリックに取り組むアプローチをとっています。例えば、お客様の課題感をヒアリングしサンプルデータをいただき、ユースケースを一緒に考える。そして1か月以内に利用イメージを確認できる画面を提供し、そこから数か月Try&Errorのサイクルを回し、サービスを段階的に改善していきます。そこで作った環境は無駄にすることなく、本格展開につなげていくようにしています。データ活用におけるアジャイル開発と言ってもいいかもしれません。
――こういったTry&Errorをスピード感持って取り組むこと、つまりデータ活用にはAgilityが重要ということでしょうか。
まさしくその通りです。データ活用にはAgilityが重要であると考えています。我々の事業部では、お客様の中に入り込み、とにかくAgilityを追求した情報系システムの構築に強みを持っています。例えば、現在取り組んでいる案件では、お客様向けにDX全方位支援ということで、ビジネスプロセスの改革から組織・制度変革、DevOps基盤の構築、サービス開発までお客様と一体で取り組んでいる事例もあります。これらの我々の事業部が持つケイパビリティとABLERが持つケイパビリティがミックスされることにより、Agilityをもってデータ経営資源化を実現できる。そんな化学反応を起こしたいと考えています。
――これまでもデータ活用に取り組んできたABLERがさらにAgilityを持ってデータ活用、データの経営資源化を実現できるということですね。
――最後にお伺いしますが、ABLERをどう進化させていきたいとお考えでしょうか。
データ活用を通じて、社会をよりよいものにしたい、これが究極の目的です。データ活用・DXは企業規模にかかわらず、すべてのお客様に恩恵をもたらすものです。大掛かりなシステム投資をしなくても、小さく・早く作り、世の中の動きにあわせてスピーディに対応できる環境をお届けしたいと思います。今までのNTTデータはお客様から要件を頂戴し、それをITシステムとして実現することで成長してきました。これからはIT基盤・ツール・開発方法論のご提供だけではなく、お客様と共に未来を描き、その実現に向けた課題に共に取り組み、お客様と一緒に成長する、そんなブランドに成長させたいですね。
■プロフィール
瀬戸 篤志
NTTデータ 第四金融事業本部 金融グローバルITサービス事業部 事業部長
2015年から2018年まで第四金融事業本部 事業開拓推進室(現:事業開拓推進担当)に在籍。ABLER立ち上げ前から非構造化データに着目し、MarkLogicを活用したビジネス展開に従事。2018年にNTT DATA Germany出向後、2020年から現職。
福原 亜希子・中田 祐貴
NTTデータ 第四金融事業本部 金融グローバルITサービス事業部 事業開拓推進担当
業種・業界を問わず様々なお客様のデータ活用に関する課題に対して、最先端の技術を活用した自社独自ソリューションの企画・提案活動に従事。